若手職人が集まる建設会社は何が違う?人手不足知らずの秘密を公開

建設業界は、深刻な人手不足と高齢化の波に直面しています。多くの企業が「若手が来ない、育たない、定着しない」という悩みを抱える一方で、一部の企業には意欲的な若手職人が次々と集まり、活気に満ちています。

彼らは一体、何が違うのでしょうか?

本記事では、若手職人から「選ばれる」建設会社が実践している具体的な取り組みや制度、その背景にある思想までを徹底的に解剖します。人手不足とは無縁の彼らが持つ「7つの秘密」を紐解き、これからの建設業界で持続的に成長していくためのヒントを提供します。

目次

深刻化する建設業界の人手不足と高齢化の現状

若手が集まる会社の秘密を探る前に、まずは建設業界が置かれている厳しい現状を正しく理解する必要があります。

データで見る若手不足の実態

国土交通省のデータによると、建設業就業者数はピークだった1997年(平成9年)の685万人から、2023年には479万人まで減少し、約30%も減少しています。

さらに深刻なのが、年齢構成の歪みです。
2023年時点で、建設業就業者のうち55歳以上が約35%を占める一方で、29歳以下は約12%に留まっています。 全産業の平均と比較しても高齢化が著しく進行しており、このままでは10年後、20年後には技術やノウハウの承継が途絶え、社会インフラを維持することさえ困難になるという危機的な状況です。

この「若手不足」こそが、建設業界が抱える最も根深い課題と言えるでしょう。

「3K」から「新3K」へ?若者が抱く建設業へのイメージ

かつて建設業界は「きつい、汚い、危険」という「3K」のイメージが定着していました。
現在、業界全体の努力により労働環境は改善されつつありますが、若者世代には依然としてネガティブなイメージが根強く残っています。

BRANU株式会社が実施した調査では、若年層が建設業界を敬遠する理由として「体力的に厳しそう(50.3%)」「事故や怪我のリスクが高そう(44.8%)」「長時間労働のイメージが強い(34.4%)」が上位を占めました。

しかし、若手から選ばれている企業は、この古い「3K」のイメージを払拭し、「給与が良い、休暇が取れる、希望が持てる」という「新3K」を体現し始めています。彼らは、若者が仕事に何を求めているかを深く理解し、それに応える環境を能動的に作り出しているのです。

人手不足知らず!若手職人が集まる建設会社が実践する7つの秘密

それでは、若手職人を惹きつけてやまない建設会社は、具体的に何を行っているのでしょうか。ここでは、その「7つの秘密」を詳しく解説します。

秘密1:働き方改革の断行|「時間」と「休日」の常識を変える

若者が企業選びで最も重視する点の一つが、ワークライフバランスです。 人手不足に悩む企業の多くが、長時間労働や休日の少なさといった課題を抱えています。

週休2日制の徹底と長時間労働の是正

選ばれる企業は、週休2日制の導入を当たり前のこととして捉え、徹底しています。 国土交通省も「建設業働き方改革加速化プログラム」で週休2日の推進を掲げており、社会全体の要請でもあります。

彼らは、ICTツールの導入による業務効率化や、適切な工期設定、施工時期の平準化などを通じて、長時間労働の是正に本気で取り組んでいます。 「残業は当たり前」という古い価値観を捨て、生産性を高めることで、社員のプライベートな時間を確保しているのです。

秘密2:給与・評価制度の透明化|努力が報われる仕組みづくり

「給与が高そう」「手に職をつけたい」という点は、若者が建設業界に魅力を感じる大きな理由です。 しかし、その一方で評価基準が曖昧であったり、キャリアパスが見えにくかったりすると、モチベーションの低下や早期離職につながってしまいます。

明確な評価基準とキャリアアップ制度

若手が集まる企業は、評価制度を透明化し、「何をどれだけ頑張れば、どのように評価され、給与に反映されるのか」を明確に示しています。

評価・給与制度のポイント

項目内容
評価基準の明確化技術レベル、保有資格、勤務態度、後輩指導などの評価項目を具体的に設定
資格取得支援資格取得にかかる費用(受験料、講習費など)を全額会社負担。取得後には資格手当を支給
キャリアパスの提示「見習い → 職長 → 現場代理人」など、具体的なキャリアステップと、各段階で求められるスキル・給与水準を明示
定期的な面談上長との1on1ミーティングを定期的に実施し、目標設定やキャリア相談ができる機会を設ける

このような仕組みがあることで、若手社員は自身の成長を実感しやすく、将来の目標を持って仕事に取り組むことができます。

秘密3:最先端テクノロジー(DX/ICT)の積極導入|「新3K」の体現

建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、もはや一部の先進的な企業の取り組みではありません。若手採用を成功させるための必須戦略となっています。

テクノロジーが現場を変える

ドローンによる測量、BIM/CIMによる3D設計、勤怠管理や写真整理のクラウド化、建設ロボットの導入など、ICT技術は現場の生産性を飛躍的に向上させます。

これらの技術は、単に業務を効率化するだけではありません。

  • 身体的負担の軽減: 重機やロボットの活用により、危険で体力的に厳しい作業を減らす。
  • 情報共有の円滑化: タブレット端末一つで図面や指示を確認でき、事務所に戻る手間を削減。
  • 魅力の向上: 「テクノロジーを駆使するスマートな仕事」という新しいイメージを創出。

デジタルネイティブである若手世代にとって、ICT化の遅れは企業の魅力低下に直結します。 積極的にテクノロジーを導入し、現場の働き方をアップデートしていく姿勢が、若手を惹きつけるのです。

秘密4:「育成」への本気の投資|見て盗むから「育てて見せる」へ

「技術は現場で見て盗め」という伝統的な育成方法は、もはや通用しません。株式会社ウィルオブ・コンストラクションの調査によると、若手社員の半数近くが「研修時間や内容が不十分」と感じているというデータもあります。

体系的な教育プログラムの構築

若手が定着し、成長する企業は、人材育成を「コスト」ではなく「投資」と捉え、体系的な教育プログラムを整備しています。

育成プログラムの具体例

  • 新入社員研修: 社会人マナーから始まり、工具の使い方、安全教育など、基礎の基礎から丁寧に指導。
  • OJT制度: 経験豊富な先輩社員が「ブラザー・シスター」としてマンツーマンで指導。技術だけでなく、仕事の進め方や悩み相談にも乗る。
  • 技能研修センターの設置: 自社で研修施設を設け、天候に左右されずに実践的なトレーニングを行える環境を整備。
  • 定期的な勉強会: 新しい工法や技術に関する勉強会を定期的に開催し、全社員のスキルアップを図る。

「会社が自分を育ててくれる」という安心感と実感は、若手社員のエンゲージメントを高め、定着率を向上させる上で極めて重要です。

秘密5:魅力的な福利厚生と職場環境|社員と家族を大切にする姿勢

給与や休日といった基本的な労働条件に加え、独自の福利厚生や働きやすい職場環境も、企業選びの重要な判断基準となります。

ユニークな制度で満足度向上

選ばれる企業は、法定福利厚生だけでなく、社員のエンゲージメントを高めるためのユニークな制度を導入しています。

ユニークな福利厚生の例

  • 家族向けイベント: 社員だけでなく、その家族も参加できるバーベキューやキャンプ、現場見学会などを開催し、家族からの応援を得る。
  • 奨学金返済支援制度: 若手社員の経済的負担を軽減するため、会社が奨学金の返済を一部または全額肩代わりする。
  • 道具プレゼント制度: 月間MVPに選ばれた社員に、最新の電動工具などをプレゼントする。
  • しあわせ一時金制度: 社員の出産時に、第1子30万円、第2子50万円、第3子以降100万円といった高額な祝い金を支給する。

これらの制度は、単なる金銭的な補助に留まりません。「社員とその家族を大切にしている」という会社の姿勢を明確に示し、社員のロイヤリティ(忠誠心)を高める効果があります。

秘密6:積極的な情報発信とブランディング|会社の顔を見せる広報戦略

どんなに素晴らしい取り組みをしていても、それが求職者に伝わらなければ意味がありません。若手が集まる企業は、自社の魅力を積極的に発信する広報・ブランディング戦略に長けています。

SNSや自社メディアの活用

現代の若者は、企業のウェブサイトだけでなく、SNSや動画共有サイトなど、様々なメディアから情報を収集します。

情報発信のポイント

  • ウェブサイトの充実: 会社の理念や事業内容はもちろん、社員インタビューや一日の仕事の流れ、キャリアモデルなどを掲載し、入社後の姿を具体的にイメージできるようにする。
  • SNSの活用(Instagram, X, YouTubeなど): 現場の様子や社内イベント、若手社員の活躍などを写真や動画でカジュアルに発信し、会社の「素顔」を見せる。
  • 地域社会との連携: 地元の高校や専門学校で出前授業を行ったり、インターンシップを積極的に受け入れたりすることで、未来の担い手との接点を作る。

「この会社で働いたら楽しそう」「この人たちと一緒に仕事がしたい」と思わせるような、顔の見える情報発信が、応募のきっかけとなるのです。

とはいえ、日々の業務に追われる中で、効果的な採用ブランディングやウェブサイトの構築・運用まで手が回らないという企業も少なくありません。そうした場合には、専門的なノウハウを持つ外部パートナーの活用も有効な選択肢となります。

例えば、建設業界に特化した採用支援で知られるブラニューでは、採用サイト制作から動画活用、SNS運用までを一貫してサポートするブラニューのサービスも提供されており、自社の魅力を最大化するための具体的な手法を相談してみるのも良いでしょう。

秘密7:明確なキャリアパスの提示|将来を描ける安心感

若手社員が早期に離職してしまう原因の一つに、「将来への不安」があります。 この会社で働き続けて、自分はどのように成長できるのか、どんな未来が待っているのかが見えないと、働く意欲を維持することは困難です。

成長の道筋を具体的に示す

魅力的な企業は、社員一人ひとりが自身のキャリアプランを描けるよう、具体的な道筋を提示しています。

キャリアパスの提示例
「入社後3年間は、先輩の指導のもとで基礎的な技術を習得し、関連資格を3つ取得することを目指します。5年目には職長として数名のチームをまとめ、10年後には現場代理人として数十人規模の現場を動かす存在になってほしい。そのための研修やサポートは会社が全面的に行います。」

このように、具体的な年数や役職、目標を提示することで、若手社員は日々の業務に目的意識を持ち、長期的な視点でキャリアを築いていくことができます。

【事例紹介】若手採用に成功している企業の具体的な取り組み

ここでは、実際に若手採用と定着に成功している企業の事例をいくつかご紹介します。

事例1:ICT活用と制度改革で残業60%削減を実現した企業

東京都のある建設会社では、勤怠管理システムの導入やタブレット端末の全社員への配布を徹底。 現場から直接、日報の提出や写真の整理を行えるようにしたことで、事務所に戻ってからの事務作業を大幅に削減しました。
さらに、ノー残業デーの定例会議での進捗確認などを通じて、残業時間を改革前の約60%も削減することに成功。 「建設業でも定時で帰れる」という実績が口コミで広がり、若手からの応募が増加しました。

事例2:「つくるひとをつくる」をモッ トーに安定採用している企業

ある地方の建設会社は、「つくるひとをつくる」を社是に掲げ、社員第一主義の経営を徹底しています。
特に力を入れているのが人材教育で、新入社員には手厚い研修制度を用意。さらに、顧客に対しても「社員の成長のため、多少の失敗はご容赦ください」と経営方針への理解を求めることで、若手が挑戦しやすい文化を醸成しています。
こうした姿勢が評価され、企業合同説明会にほとんど参加しなくても、若手からの応募が絶えない状況を生み出しています。

事例3:ユニークな福利厚生で社員満足度と定着率を向上させた企業

ある建設会社では、社員の健康と幸福(ウェルビーイング)を重視し、ユニークな福利厚生を多数導入しています。
例えば、大型重機200台以上を保有し、社員が希望する重機の免許取得を全額支援。さらに、社員やその家族が利用できる保養所を複数所有し、プライベートの充実をサポートしています。
「社員を大切にする会社」という評判が広まり、離職率が大幅に低下。社員が自社の魅力を語ることで、新たな人材を惹きつける好循環が生まれています。

まとめ:若手から選ばれる建設会社になるために、今すぐ始めるべきこと

若手職人が集まる建設会社は、決して特別なことをしているわけではありません。彼らは、「働き手の目線に立ち、今の時代に合った魅力的な職場環境を本気で創り上げている」という点で共通しています。

「働き方」「給与・評価」「テクノロジー」「育成」「福利厚生」「広報」「キャリアパス」という7つの要素は、すべてつながっています。どれか一つだけを取り繕うのではなく、会社全体の思想として改革を進めていくことが重要です。

人手不足は、もはや外部環境のせいにはできません。自社の在り方を見つめ直し、若手から「選ばれる」ための努力を始めること。それこそが、これからの建設業界を生き抜くための唯一の道と言えるでしょう。

最終更新日 2025年12月15日 by wannya