「雪かき」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか。
大変そう、寒そう、できれば避けたい…。
そんな声が聞こえてきそうです。
では、「温泉」はどうでしょう。
心も体も温まる、癒やしの時間、最高の贅沢…。
きっと、ポジティブな言葉が並ぶはずです。
もし、この正反対にも思える「雪かき」と「温泉」が、すぐ隣り合わせにある暮らしだとしたら。
こんにちは、新潟県長岡市で地域情報ライターをしている高橋 純一です。
かつて東京で働き、故郷の雪景色に呼ばれるようにUターンして15年以上が経ちました。
この記事では、観光ガイドには載っていない、新潟の「日常」にあるスローライフの魅力をお伝えします。
雪国の厳しい冬と、そこにある温かな営み。
四季の風景と地元の人々の声から見えてくる、本当の“暮らしの豊かさ”を、あなたにお届けできれば嬉しいです。
雪国・新潟の冬と共に生きる
新潟の冬は、静かに、そして圧倒的な白さで訪れます。
都会の喧騒とは無縁の、しんしんと雪が降り積もる夜。
それは美しい反面、翌朝の「仕事」を知らせる合図でもあります。
雪かきが育む地域の絆
朝、玄関のドアを開けると、一晩で世界が変わっていることがあります。
そんな時、決まって聞こえてくるのが、あちこちから響く金属音。
アルミスコップが雪をかく、ザッ、ザッ、という音です。
これが、雪国の日常の始まりの合図。
「おはようございます!」「いやー、降りましたねぇ」
ご近所さんと交わす言葉は、いつだって雪のこと。
「隣のおじいちゃん、腰が悪いから、家の前の道だけは俺がやっとくんだ。
お互い様だからな。
」
これは、私が取材で出会った農家さんの言葉です。
雪かきは、決して一人でするものではありません。
自然と助け合いの輪が生まれ、それが地域の見えない絆を強くしていく。
大変な作業だからこそ、人の温かさが身に染みるのです。
白銀の朝に響くスコップの音
雪かきは、正直に言って重労働です。
体の芯まで冷えますし、汗もかきます。
でも、ひと仕事終えて、きれいに道が開けた時の達成感は格別です。
白銀の世界に、自分たちの手で一本の道をつくる。
それは、どこか清々しい気持ちにさせてくれます。
大雪の日々と、静けさに包まれる時間
大雪が降ると、物理的に移動が制限されることもあります。
そんな日は、無理をしないのが雪国の知恵。
家で静かに過ごす時間が増え、普段は読めなかった本を読んだり、じっくりと料理をしたり。
外の世界から切り離されたような静寂の中で、自分自身と向き合う時間。
これもまた、雪がもたらしてくれる豊かさの一つなのかもしれません。
心と体を癒す温泉のある日常
雪かきでかいた冷たい汗を、最高の形で流す方法。
それが、新潟の暮らしには当たり前のように存在します。
そう、温泉です♨️
地元の湯に通うという贅沢
「ちょっと、ひとっ風呂浴びてくるか」
そんな気軽さで、本物の温泉に行けるのが新潟の魅力。
スーパー銭湯ではなく、大地の恵みそのものである温泉が、日常の延長線上にあります。
雪かきで疲れた体を湯船に沈めると、「ふぅーっ」と、心からの安堵のため息が漏れます。
筋肉の緊張がゆっくりとほぐれていく感覚。
これは、雪国で暮らす人々にとって、何よりのご褒美なのです。
長岡・小千谷エリアのおすすめ日帰り温泉
私が暮らす長岡市や、隣の小千谷市にも、気軽に立ち寄れる素晴らしい温泉がたくさんあります。
いくつか、私のお気に入りをご紹介しますね。
- 蓬平温泉 和泉屋(長岡市)
「長岡の奥座敷」とも呼ばれる、静かな山あいにある温泉です。
とろりとした肌触りのお湯は、美肌効果も期待できると言われています。
雪かき後の肌ケアにもぴったりかもしれません。 - えちご川口温泉(長岡市)
雄大な信濃川を見下ろす絶景の露天風呂が自慢です。
特に夕暮れ時は格別で、川面に映る空の色を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごせます。 - 湯どころ ちぢみの里(小千谷市)
道の駅に併設されているので、ドライブがてら立ち寄るのに最適です。
お風呂上がりに、地元の新鮮な野菜や特産品を買って帰るのも楽しみの一つです。
雪景色と湯けむり:冬の露天風呂の魅力
冬の温泉の醍醐味といえば、やはり雪見風呂でしょう。
しんしんと降る雪を眺めながら、湯けむりに包まれる。
頭はひんやりと涼しく、体は芯から温かい。
この感覚は、一度味わうと忘れられません。
厳しい冬の自然と、大地の温かさ。
そのコントラストを全身で感じられる、雪国ならではの究極の癒やしです。
スローライフの本質に触れる日々
新潟での暮らしは、ただゆっくり時間が流れるだけではありません。
季節の移ろいに寄り添い、自然の恵みをいただく。
そんな、人間本来のリズムを取り戻せる暮らしがここにあります。
冬だからこそ豊かになる食卓
雪に閉ざされる冬は、食卓が貧しくなると思われがちですが、実は逆です。
冬を越すための先人の知恵が、豊かな食文化を育みました。
- 保存食の数々:秋に収穫した野菜を漬物や干し野菜に。
はりはり漬けの小気味よい食感は、冬の楽しみの一つです。 - 発酵文化の極み:米どころ新潟は、言わずと知れた酒どころ。
酒蔵から生まれる酒粕を使った「粕汁」は、体を内側から温めてくれる冬の定番料理です🍶 - 雪下野菜の甘み:雪の下でじっくりと甘みを蓄えた人参や大根は、まるで果物のよう。
自然が作り出す、最高のデザートです。 - のっぺ:里芋のとろみが特徴の、新潟を代表する郷土料理。
お正月には欠かせない、それぞれの家庭の味があります。
「待つ」ことで得られる四季の喜び
春には雪解け水が田んぼを潤し、夏には太陽の光を浴びて稲が育つ。
秋には黄金色の稲穂が垂れ、冬には雪の下で大地が休む。
都会のスピード感とは違う、「待つ」ことの大切さ。
焦らず、自然のリズムに身を任せることで、それぞれの季節がもたらしてくれる喜びを、より深く感じられるようになります。
地元の人々が教えてくれた暮らしのリズム
Uターンした当初、私は少し焦っていました。
東京のペースが抜けきらなかったのかもしれません。
そんな私に、近所のおばあちゃんがこう言いました。
「純一くん、そんなに急がんでも、春はちゃんと来るすけね」
その一言で、肩の力がすっと抜けました。
自然と共に生きる人々が持つ、おおらかで力強いリズム。
それこそが、スローライフの本質なのかもしれません。
Uターンして気づいた“地元”の可能性
東京での暮らしも刺激的で楽しいものでした。
しかし、大雪の年に帰省し、雪かきに追われる両親の姿を見た時、私の心は決まりました。
「ここで、この人たちと共に生きていこう」と。
雪国で働く・暮らすという選択
Uターンして選んだのは、地域の情報を発信するライターという仕事。
都会にいた頃よりも収入は減ったかもしれません。
しかし、それ以上に得られたものがたくさんありました。
- 満員電車のない通勤
- 家族と過ごす時間
- 採れたての美味しい食材
- 息をのむほど美しい夕日
お金では買えない豊かさが、ここには確かに存在します。
地域とのつながりが生む安心感
地域とのつながりは、時に面倒に感じることもあるかもしれません。
しかし、それ以上に大きな安心感を与えてくれます。
子どもが熱を出せば、隣の人が「何か買ってこようか?」と声をかけてくれる。
車が雪で動けなくなれば、どこからともなく人が集まって押してくれる。
この顔の見える関係性こそが、暮らしのセーフティネットになっているのです。
「観光地」ではない「生活の場」の魅力
私が発信したいのは、きらびやかな観光地の情報だけではありません。
人々が日々を営む「生活の場」としての新潟の魅力です。
朝の雪かき、夕方の温泉、旬の食材が並ぶ食卓。
そんな何気ない日常の風景こそが、最も尊く、多くの人を惹きつける力を持っていると信じています。
もちろん、私が紹介する日常の魅力とは別に、特別な時間を過ごせる場所も新潟には豊富にあります。
最近では、私のようなUターン組とはまた違う視点で、新潟のハイエンドな体験や観光スポットを紹介する若い世代の発信も増えており、地元の新たな可能性を感じずにはいられません。
雪かきと温泉が教えてくれること
雪かきという「厳しさ」と、温泉という「癒やし」。
この両極端な体験が、新潟での暮らしに深い味わいを与えてくれます。
冬の大変さの中にある小さな幸せ
雪かきは、確かに大変です。
しかし、その大変さを乗り越えた先にある温かい一杯のコーヒーや、湯船に浸かる瞬間の幸福感は、何物にも代えがたいものがあります。
苦労があるからこそ、小さな幸せをより強く感じられるのです。
温もりは、地熱だけではない
温泉が与えてくれるのは、地熱による物理的な温かさだけではありません。
湯船で交わす世間話、番台のおばちゃんとの挨拶。
そこには、人の温もりが満ちています。
雪かきで生まれる助け合いの心も同じです。
新潟のスローライフを支えているのは、温泉の熱と、人の心の温かさなのだと、私は思います。
新潟のスローライフを支える見えない営み
私たちが享受しているこの豊かな暮らしは、決して当たり前のものではありません。
冬の間に道路を除雪してくれる人々。
美味しいお米や野菜を作ってくれる農家の方々。
地域の伝統を守り続ける職人さんたち。
そうした、たくさんの人々の見えない営みの上に、私たちの日常は成り立っています。
そのことへの感謝を忘れずにいたいと、いつも思っています。
まとめ
雪国・新潟で暮らすということ。
それは、決して楽なことばかりではありません。
しかし、そこには都会では決して味わえない、本物の豊かさが存在します。
- 厳しい冬の自然と共存し、助け合うことで生まれる人の絆。
- 雪かきという労働の後に待っている、温泉という最高のご褒美。
- 季節の移ろいを肌で感じ、自然の恵みをいただく豊かな食卓。
- 「おかえり」と迎えてくれる、人の温かさがもたらす安心感。
この記事を読んで、新潟の暮らしのリアルな息づかいを少しでも感じていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。
もし、あなたが日々の暮らしに何か物足りなさを感じているのなら。
「次の週末、ちょっと新潟に行ってみようか」
その一歩が、あなたの新しい“ふるさと”を見つける旅の始まりになるかもしれません。
最終更新日 2025年7月20日 by wannya