「同じ条件で動かしているはずなのに、なぜか塗布量が安定しない」。
接着剤やシール材、放熱材を扱う現場では、こうした違和感が不良率や手直し工数に直結します。
私は製造設備の選定に携わってきた立場から、塗布ムラは装置の性能だけでなく、材料、温度、ノズル、ワーク姿勢の合わせ込みで大きく変わると見ています。
この記事では、製造ラインの塗布ムラを減らすために、最初に見直すべき吐出条件を整理します。
目次
塗布ムラは「吐出量」だけで起きているわけではない
まず見るのは1ショットあたりの量
塗布ムラが出たとき、最初に確認する数字は1ショットあたりの吐出量です。
たとえば0.05グラムを狙う工程で、実測値が0.045グラムから0.058グラムまで振れていれば、外観以前に計量条件が崩れています。
まずは10ショット連続で重量を測り、平均値ではなく最大値と最小値の差を見てください。
この差が品質判定幅の半分を超えるなら、塗布パターンの調整に入る前に吐出条件を戻す順番です。
材料粘度と温度を切り離して考えない
粘度は材料の「流れにくさ」で、同じ圧力や同じ時間で押し出しても、温度が変われば出方が変わります。
朝一番は細く、午後になると多めに出る工程では、装置より先に材料温度と保管状態を疑います。
厚生労働省の化学物質のリスクアセスメント実施支援でも、化学物質は取扱条件を踏まえてリスクを見積もる考え方が示されています。
塗布工程でも同じで、材料名だけで判断せず、粘度、可使時間、加温条件、硬化時間を1枚の条件表にまとめると原因を絞れます。
| 確認項目 | 見る数字 | 現場での判断 |
|---|---|---|
| 吐出量 | グラム、ミリリットル | 10ショットのばらつきで見る |
| 材料温度 | ℃ | 作業開始時と連続運転後を分ける |
| 粘度 | ミリパスカル秒 | 仕様書の測定温度も確認する |
| 可使時間 | 分、時間 | 混合後の経過時間を記録する |
吐出条件は「圧力・時間・距離」の3点でそろえる
圧力と時間は片方だけを動かさない
エア圧送式のディスペンサでは、圧力を上げれば多く出ますが、材料の糸引きや液だれも増えます。
吐出時間を伸ばしても量は増えますが、タクト内で液が切れないと次のワークに持ち越します。
圧力と時間を同時に触ると、何が効いたのか分からなくなる。
調整時は圧力を固定して時間だけを3段階、次に時間を固定して圧力だけを3段階という形で、1条件ずつ動かします。
ノズル先端とワークの距離を固定する
塗布ムラの原因として見落とされやすいのが、ノズル先端とワークの距離です。
距離が近すぎると材料が押しつぶされ、遠すぎると線が細くなり、着弾位置も乱れます。
特に凹凸のあるワークでは、治具のガタ、ワーク浮き、ロボット高さのずれがそのまま線幅に出ます。
目安は「狙った線幅が出る最短距離」から始め、ノズル交換後も同じゲージで確認する運用です。
- 圧力を変えた日は、吐出量を重量で測る
- ノズルを交換した日は、線幅と着弾位置を見る
- 材料ロットが変わった日は、粘度と温度を記録する
- ワーク治具を替えた日は、先端距離をゲージで確認する
装置選定の前に、現場条件を数値化する
方式選定は材料条件から逆算する
ディスペンサにはエアシリンジ方式、チュービング方式、容積計量方式などがあり、どれが上位という話ではありません。
低粘度で少量ならシリンジ方式が扱いやすく、高粘度や比率管理が必要な材料では容積計量方式が合います。
方式ごとの特徴は、ディスペンサー装置の基本や吐出方式を整理したナカリキッドコントロールの解説が参考になります。
「今ある装置で何とかする」ではなく、吐出量、粘度、1液か2液か、必要精度の4項目から方式を絞るのが近道です。
自動化の前に標準条件を決める
経済産業省などが公表している2025年版ものづくり白書では、製造業の競争力強化に向けたデジタル化や投資動向が整理されています。
ただし、塗布工程では自動化そのものより、標準条件が先です。
人が作業しても装置が作業しても、材料温度、吐出量、ノズル距離、ワーク固定が決まっていなければ、ばらつきは残ります。
自動化は最後の仕上げ。
その前に、合格品が出た条件を数値で残します。
| 工程条件 | 標準化する内容 |
|---|---|
| 材料 | ロット、保管温度、使用開始時刻 |
| 装置 | 圧力、吐出時間、ポンプ設定 |
| ノズル | 内径、長さ、交換基準 |
| ワーク | 固定方法、高さ、清掃状態 |
まとめ
塗布ムラを減らすには、装置を疑う前に、吐出量、材料温度、粘度、ノズル距離、ワーク固定を数字でそろえます。
特に10ショットの重量測定、材料ロット変更時の記録、ノズル交換後の線幅確認は、すぐに始められる管理です。
感覚で「今日は少し多い」と見るのではなく、最大値と最小値の差で判断してください。
その数字が残れば、装置変更やディスペンサ方式の見直しも、勘ではなく条件から決められます。
最終更新日 2026年7月3日 by wannya







